リッチー・ヨークによるツェッペリンの伝記を読むと、1972年4月に行われた録音の様子が書かれています。
・4月の湿っぽい夜、リッチー・ヨークはオリンピック・スタジオを訪ねた。
・スタジオ1では、ツェッペリンだけでなく、スレイドも録音していた。
・ジミーがリズム・トラックにギターをオーバー・ダビングしているところだった。
・ジミーの作業中、ジョンジーはエンジニアの傍らに腰かけていた。
・作業はあまりうまくいっておらず、インター・コムの会話から察するに、ジミーは望みのギターの音が出せないようだった。
・スタジオには、スカリーの巨大な16トラックのテープ・レコーダーとドルビーのノイズ・リダクションが設置されていた。
・作業を15分ほど続けたあと、ジミーはヨークに「Dancing Days」と「スラッシュ」という曲を聴かせた。
・ジミーは、6月にアルバムを発売する予定だと語っていた。
・ペイジは翌朝に使用するための新しいギターとアンプを手配した。
・あまりうまくいっていないため、その夜の作業はそこで終わりとなった。
・ロバートは子供が生まれたため、このときには不在だった。
ここで前回挙げた、4月に録音された曲をもう一度挙げてみます。
ベーシック・トラックの録音
72年4月12日: Dancing Days
72年4月12日: Houses Of The Holy
72年4月15日: The Ocean
72年4月16日: Next One (Over The Hills And Far Away)
72年4月16日: The Crunge
コンパニオン・ディスクに収録されているラフ・ミックスの制作
72年4月30日: Houses Of The Holy Rough Mix with Overdubs
72年4月30日: Over The Hills And Far Away Guitar Mix Backing Track
72年5月30日: The Crunge Rough Mix - Keys Up
72年8月4日: Dancing Days Rough Mix With Vocal
72年11月16日: The Ocean Working Mix
これらの音源をリッチー・ヨークの話と突き合わせてみると、裏付けがとれるようで面白いですね。
初めて伝記を読んだどきには、その内容をすぐに忘れてしまいましたが、音源を聴きながら読んでみると、そのときの様子をあれこれ想像してしまいます。
コンパニオン・ディスクには「Dancing Days」が収録されていますが、ヴォーカルが入っていて、完成に近い状態です。
4月の時点から大分経過した、ミックスされた時期が8月の音源なので、それももっともかなと思います。
リッチー・ヨークが聴いたときには、ヴォーカルはもちろん、ギターのダビングも進んでいない、ずっと初めの段階だったのでしょうね。
ヴォーカルというと、「Over The Hills And Far Away」のミックスには入っていませんが、「Houses Of The Holy」のミックスには入っています。
この両曲は4月30日にミックスされたのですが、4月の中旬には不在だったロバートが4月終わりには合流して、その頃からヴォーカル・トラックを入れ始めたのかなと思いました。
これらの曲の中に「スラッシュ」はありませんね。
「スラッシュ」は昔から噂されていて、リズム・トラックだということだけ聞いた憶えがあるのですが、具体的にはどんな曲なのでしょうか。
いまだに明らかになっていません。
コンパニオン・ディスクが発売されたことで、おなじみの曲が、発売前は全く違った曲名を付けられていたということがわかりました。
リッチー・ヨークが聴いたときにはまだ着手したばかりだった「スラッシュ」が、実はおなじみの何かの曲だったという可能性はあるでしょうか。
もしくは、やはり未発表の曲なのでしょうか。
「Houses Of The Holy」のコンパニオン・ディスクは、公式版とあまり変わらない内容だったため、友人の間では残念だったという意見が多くでました。
かなり始めの段階のデモ・テイクや、未完成でも知られていない曲(それは「スラッシュ」も含まれるかもしれません)が収録されていたら、評価は違っていたかもしれませんね。