1972年4月30日に作られたラフ・ミックスを聴いてみます。
今回採り上げる二曲は、もともとは4月中旬にベーシック・トラックが録音されていました。
1. 4月12日録音:「Houses Of The Holy」
2. 4月16日録音:「Over The Hills And Far Away」
「Houses Of The Holy Rough Mix with Overdubs」
ヴォーカルが入っていて歌詞も完成していますが、ギター・ソロはありません。
この曲はアルバムと同名なのに、「Houses Of The Holy」では見送られ、次の「Physical Graffiti」に収録されました。
とはいえ4月後半時点では、収録候補曲の中で最も作業が進んでいたようです。
こちらはトラック・シートです。
Titleの欄には「Untitled② Houses Of The Holy」と記載されています。
この時点では、曲名は正式に決まっていなかったのでしょうか。
スタジオ名のOneというのは、オリンピック・スタジオの第1スタジオでしょうね。
ベースのトラックは3つもありますね。
トラック7はダイレクト・インで録音されたと思うのですが、トラック6のC12Aやトラック8のV67という表記についてはよくわからないです。
なにかのエフェクトでしょうか。
トラック9には、カウベルとタンバリンのオーバー・ダビングが行われました。
確かに1分12秒付近などでカウベルの音が聞こえますね。
ここで聴けるカウベルには、エフェクトがかけられていないようです。
トラック14はヴォーカルトラックですが、「RO? VOCAL」と表記されています。
"RO?"とはなんでしょう。RAWではないですよね。
おそらくコーラスなどではなく、基本になるヴォーカル・トラックのことだと思うのですが。
トラック15と16はスタジオの残響をステレオで収録したものかと思います。
16トラックでの録音が一般的になってきたことから、残響効果をトラックに割り当てる余裕ができたのでしょう。
このミックスが作られたあとも、トラック10から13を使ってオーバー・ダビングされたかもしれません。
手を加えながら、だんだんと完成に近づけていったのかと思います。
「Over The Hills And Far Away Guitar Mix Backing Track」
このミックスにはヴォーカルが入っていませんね。
レコードに収録された正式なミックスとは左右のチャンネルが入れ替わっています。
またジミーが「イリュージョン」と表現した終わりの部分（一時的に音がフェイドアウトして無音になり、再び音が戻る部分）もありません。
曲の骨格が出来上がった状態で、完成までにはまだまだ作業が必要かという印象ですね。
ただこの曲は6月のUSツアーで演奏されたため、歌詞を含めて曲自体は5月までには形になっていたと思われます。
こちらはトラック・シートです。
全体が一度消されて書き直されたように見えますが、何があったのでしょう。
曲名は「Next One」と記載されています。このあと「Many Many Times」に変わったようで、最後に「Over The Hills And Far Away」に落ち着きます。
ジミーのインタビュー記事によると、この曲ではまずエレクトリック・ギターのパートが録音されて、続いてアコースティック・ギターのパートが追加されたようです。
トラック7は、初めに録音されたというエレクトリック・ギターでしょう。
トラック8が12弦アコースティック・ギターのトラックで、曲全体を通して重ねられたのですが、不要な箇所はミュートされたのだと思われます。
トラック9は6弦のアコースティック・ギターでしょうか。
枠の下の方に書かれた内容は読み取りづらく、"AcV???Front..."と書かれていますが、なんだかよくわかりません。
トラック10や12は後からオーバーダビングされたエレクトリック・ギターのパートで、4月27日にダビングされたようです。
コンパニオン・ディスクのミックスは4月16日に作られたので、このパートは入っていないはずです。
これもよく読めないのですが、トラック13はギター・ソロのようですね。
ベース・ギターには3つのトラックが割り当てられていて、これは「Houses Of The Holy」と同じです。
同じといえば、「Houses Of The Holy」でもドラム・トラックには「No Dolby」と書かれています。なぜわざわざ書く必要があったのでしょう。
他のトラックにはドルビーがかけたけれど、ドラム・トラックだけにはかけなかったということでしょうか。トラックごとにドルビーをかけたりかけなかったりということは、一般的に行われていることでしょうか？
