M44の広告によると、有効垂直角度がまちまちだと、IMや高調波ひずみがでると書いてあります
どうしてそうなるのか、山本武夫氏が書いた「レコードプレーヤー」という本で調べてみました。
ざっくりまとめると。。。
- 垂直の信号を録音する場合、カッター針はカッター振動系の中心を回転中心としてA-A'の軌跡を描く。
- 垂直方向に対するA-A'方向の傾き角を垂直録音角θという。
- 垂直の信号を再生する場合、再生針は再生振動系の中心を回転中心としてB-B'の軌跡を描く。
- 垂直方向に対するB-B'方向の傾き角をカートリッジの垂直トラッキング角φという。
- 垂直録音角θと垂直トラッキング角φが等しければ問題はないが、一般的には相違していて、これが歪の原因になる。
。。。ということのようです。
厳密にはA-A’とB-B'は直線でなく、円弧だと思うのですが、動き量が小さいので、ほぼ直線と考えていいでしょうか。
加えてこんなことも書かれています。
- カッター針はA-A'上で単振動をするため、垂直録音角が0度にならない限り、正弦波を録音しても音溝の形は正弦波状にならない。
- ラッカー盤には弾性があるので、カッティング針の動きがそのままラッカー盤に残るわけではない。
- 垂直録音角θに対して、ラッカー盤の弾性で戻った角度を実効垂直録音角θeという。
- アメリカのCBSやRCAなどのレコードでは、垂直録音角θ23度のカッターを使っていたので、実効垂直録音角θeは約0度になってしまう。
- ヨーロッパ系のロンドンなどのレコードでは、垂直録音角θ0度のカッターを使っていたので、実効垂直録音角θeは約-10度になってしまう。
前回のカッターと再生針の実効垂直角を統一するという話は、こういった現象が背景にあったのですね。