LED ZEPPELIN - CELEBRATION DAYS

Led Zeppelinの音源を少しずつ集めています。

Reels Of The Holy 11 :  1972年5月30日に制作されたラフ・ミックス

スターグローブスでの録音が終わりましたが、作業はさらに続きます。

スターグローブスでは何曲も録音されて、作業は大分はかどったように思えるのですが、実際はあまりうまくいかなかったようです。
伝記やインタビューによると、せっかく録音したテープでしたが、音質面で問題があったようなのです。

現地にいる間にモービル・スタジオでテープを再生したときには悪くなかったのですが、ロンドンに帰って普通のスタジオで聴いてみると、どうも勝手が違うという。。。
こういう話って、Four Symbolsのときにもありましたね。ロス・アンジェルスのサンセット・スタジオでミックスしたテープはお蔵入りになって、ミックスをもう一度やり直すことになってしまいました。

 そもそもモービル・スタジオは、スタジオ使用料に無頓着だったキース・リチャーズを見かねて、ミック・ジャガーが考案したものでした。
自分の別荘に手を加える必要もなく、好きな時に利用ができて、移動もできてとても便利なスタジオでした。
音響の専門家からアドバイスをもらって、防音設計を取り入れたり、ヘリオスの卓や16トラックのレコーダーを導入したともいわれています。
とはいえ、さすがに普通のスタジオと同じようにはいかなかったのか、ジミーの要求に応えるまでの音質は得られなかったのでしょうか。

バンドはこのため、5月にロンドンのオリンピック・スタジオで、6月にはニューヨークのエレクトリック・レディで、オーバーダビングやミックスなどの作業をして挽回することになりました。

4月の段階では、ジミーはリッチー・ヨークに「次のアルバムは6月に発売したい」と話していたのですが、とても無理な状況ですね。

そういえば1972年にバンドが来日したとき、ミュージック・ライフ誌がジミーにインタビューをしたのですが、そこで彼は「新しいアルバムは録音をやり直した」と発言していました。

残されたラフ・ミックスとレコードの演奏は同じテイクなので、流石に一から録音し直したということ考えにくいです。
音質について、気になることは気になるけれど、そもそも全体的なスケジュールが遅れていて、ツアーも始まってしまう。。。
発売遅延は、そんな状況の中、仕方がなかったのではないかと思います。


コンパニオン・ディスクには5月30日に、制作されたラフ・ミックスが二曲収録されているので聴いてみましょう。
場所はロンドンのオリンピック・スタジオ1で、ミックスはジョージ・チキアンツが担当しました。

1.「The Crunge Rough Mix - Keys Up」1972年4月16日録音 
2.「The Overthre/Plumpton & Worcester Races(後の"The Song Remains The Same")」1972年5月18日録音

「The Crunge Rough Mix - Keys Up」
一聴したところ、レコードで聴ける正式なミックスと違いがわからないですね。
ヴォーカルも入っていますし、わずかに楽器のバランスが違うように聞こえます。

レコードにされた正式なミックス(2014年ハイレゾ音源)と周波数特性を比較したみました。
Rough Mixは正式なミックスに比べて300~1,500Hzあたりで数dB大きく、ラウドネスを測定したところよりラウドな仕上がりになっています。
4月にオリンピック・スタジオで録音された曲なので音質面で問題がなく、この曲に関しては作業がはかどったということでしょうか。
5月30日の時点で、微調整を残す程度の段階まで完成していたようですね。

トラック・シートを見ると、いろいろ書いてはいなくて、きれいですね。
ドラムは三本のマイクで録音されていて、ドルビーがかけられていません。
ベース・ギターも、他の曲に見られたように3トラック使われています。
ギターはシンプルで2トラックです。

ただここにはヴォーカルは記載されていません。
うーん、これはどういうことでしょうね。書き忘れたのでしょうか。


「The Overthre/Plumpton & Worcester Races」
こちらは、まだヴォーカルが入っていません。
ギターが正式なミックスと比べるとところどころ違っていて、左右のチャンネルが反対になっています。
こちらは5月にスターグローブスで録音されたばかりで、まだこれから手を加えるという段階でしょうか。

トラック・シートを見てみましょう。
二つの分のトラック・シートが記載されていますが、これは16トラックのマルチが2本あるということでしょうか。
テイクが二つあるとか?

幾重にもギターが重ねられた曲という印象がありますが、いろいろと試行錯誤したことがうかがえます。
上の段は、いろいろ追記されていて完成版に近いもの、下の段は試行錯誤中のもののように思えます。
これだけみても、わかることは少なそうですね。


5月後半というと、ツェッペリンは夏のツアーを始めた時期です。
5月27日にはオランダ、28日はベルギー、そして6月6日からはUSツアーが始まります。
この5月30日の作業は、ツアーが始まったばかりの慌ただしい時期に行われたことになりますね。

ずいぶん忙しいスケジュールに思えますが、ジミーとしてはアルバム制作の日程面で焦りが出て、のんびりしていられなかったのかもしれません。
彼の想いとは別に、ロンドンでの作業はここでいったん中断となり、6月中旬のニュー・ヨークで、コンサートの前後に再開されることになります。